基礎知識

長期臥床 循環器への影響

マー君世代の理学療法士です。

認定理学療法士(循環)、心臓リハビリテーション指導士、糖尿病療養指導士の資格を生かして学生、若手PT、一般の方に向けて専門的で分かりやすい情報を発信します。

今回は、長期臥床による循環器への悪影響についてまとめていきたいと思います。

その前に、早期離床の目的をまだ読んでいない方はこちらへ

早期離床ってなに?ざっくり理解しようマー君世代の理学療法士です。 認定理学療法士(循環)、心臓リハビリテーション指導士、糖尿病療養指導士の資格を生かして学生、若手PT...

早期離床の目的は簡単に理解できましたか?

さぁ、今日の内容です。

目次

  • 起立性低血圧
  • 失神を予防する機構
  • パラメータの変化

起立性低血圧

ヒトは座位や立位から臥位になると重力の影響から解放されて、下半身にあった血液が上半身へ移動していきます。

イメージしてみてください。

半分だけ中身を飲んだペットボトルを縦から横に寝かせてみてください。

イメージ出来ました?

横に倒すと飲み口から底まで下側全体に水が広が入りますよね?

これはヒトの体も同じで立位から臥位になることで上半身にたくさんの水分が移動します。

そんな感じです。

ヒトは地球上に生きている限り重力の影響は無視できません。

逆に宇宙でも同様のことが起こるため、下半身から上半身へと移動する体液量は2Lとも言われています。

上半身に血液が多くなると身体は「血液が過剰」と判断し、その結果交感神経が抑制され利尿が促進されます。

でも、実際は体液が余剰なわけではないのに利尿が促進されてしまい、全体の水分バランスは負の方向(脱水傾向)に傾いてしまいます。

さらに厄介なことに、この「負の状態」に身体は慣れてしまうのです。

失神を予防する機構

軽度の脱水状態で上体を起こすとどうなるでしょう。

体液は急速に下半身へ移動します。

このとき移動する体液量は、約700mLとも言われています。

このままでは血圧が急激に低下して失神を起こしてしまいますので、それを予防する生体機構を説明します。

心配圧受容器反射

上半身の血流量が減少すると心房や肺血管に存在する圧受容器が反応し、交感神経を亢進させます。

ヒトは、交感神経の活動が高まることで血圧低下を抑制し失神を予防します。

動脈圧受容器反射

血圧低下による動脈圧が低下すると、頸動脈洞や大動脈弓部に存在する受容器が働き、迷走神経を抑制し交感神経を亢進させ、血圧低下を予防します。

抹消血管・脳化学受容器反射

動脈圧受容器反射では血圧低下が止まらない場合、抹消血管や脳に存在する化学受容器が働いて、交感神経活動を亢進させ、血圧低下を予防します。

教科書に書いていそうなことですね。

これらをもってしても血圧低下を防止できないときに失神が起きます。

血圧低下は、循環血液量の減少がベースになって引き起こされます。

パラメータの変化

心拍数・血圧

利尿が進むまでの初期には上半身の血液が多いことを受けて血圧は上昇し、心拍数は低下します。

次第に利尿が進むと血液量の減少とともに血圧が低下し、それを補うように心拍数は増加します。

一回拍出量

初期には「スターリングの法則」に基づき、血液量の増大に伴って増加しますが、利尿が進むと血液量も減少するので、一回拍出量も減少します。

※スターリングの法則については、後日分かりやすくまとめます。楽しみにしていてください。

総体液量

臥床時も体液量は変わりませんので、利尿の促進とともに総体液量は減少します。

 

さぁ、ここまでは基礎的な知識について書いてきましたが、ここからは実際の症例や実習生(4年生)との体験をまとめていきます。

自分は循環器の患者さんを担当していないから関係ないと思った方

これから書くことは全てのPT、実習生に当てはまることですので、ぜひ最後までお読みください

高血圧既往のある90歳の女性です。

診断名は大腿骨頸部骨折であり、転倒受傷日に即入院し、その後1週間の臥床期間を経て、人工骨頭置換術を施行しました。

術翌日から離床を開始するという医師指示でした。

実習生に

今日は術後初回のリハビリだけど何に気を付けてリハビリをしようか

と聞くと、

高血圧があるのでリハビリをして血圧が上昇しないように注意します。

とすぐに言いました。

ある意味正解です。

実習生はカルテ情報をもとにリスク管理をしようと考えたことは立派なことです。

しかし、どうでしょうか。

上記に書いたことを知っていれば、気をつけるべきは「血圧上昇」でしょうか、いえ、むしろ「血圧低下」に気をつけるべきです。

カルテを見ると、術前の点滴量は1000mLに対して、利尿は1500mLほどでした。

つまり、1週間の臥床期間で連日約-500mLの「脱水傾向」にあったのです。

運動機能の評価を終えて、臥床からギャッジアップを経由して端坐位になりました。

すると、最高血圧は100→80台へ低下して、患者さんは「めまいがする」とおっしゃったのです。

つまり、こうです。

週間の臥床期間中、軽度の脱水を起こしていた

→久々に離床した際、循環器系の廃用症候群による体液量の減少、失神を予防する機構が上手に働かなかった

→血圧が低下し患者さんの脳血流量は低下

→あくびをした。

このような流れです。

実習生は驚きです。

高血圧の既往があり血圧上昇に注意していたはずが、むしろ血圧が下がったのですから。

このような体験は学校教育では出来ません。

まさに「実習に来てよかった!」というやつです。

 

 

いかがだったでしょうか?

自分に関係ないと思っていた方にも、廃用症候群による循環器への影響を理解すべき必要性がわかっていただけたかと思います。

あなたの目の前の患者さんにも起こりえることです。

早期離床ってなに?ざっくり理解しようマー君世代の理学療法士です。 認定理学療法士(循環)、心臓リハビリテーション指導士、糖尿病療養指導士の資格を生かして学生、若手PT...

 

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